炭はCO2削減になるというと、え?と思う人も多いはず。炭を作るとき、できた炭を使ってバーベキューなどで使ったときにCO2が出るはずと。確かにバーベキューなどで炭を焼けば炭の炭素(C)と空気中の酸素(O2)が燃焼反応によってCO2になります。しかし、炭の炭素(C)はもともと竹の光合成によってCO2が分解されたものですから、プラマイゼロのカーボンニュートラルとも言えます。現在問題になっている地球温暖化も、もともとは太古の昔の植物が光合成で溜め込んだ炭素の堆積物=石油を燃やしたものなので同じではないかというと、時間軸のスケールの問題ということができます。何億年もかけて太古の植物が空気中のCO2を地中に固定したものを、産業革命以降のたった百数十年間で空気中に排出してしまったことが問題と言えます。時間のスケールはだいぶ違いますが、木炭も数十年かけて木が固定したCO2を、燃やせば一気に排出してしまうので、カーボンニュートラルとはいいにくいと思います。それに対して竹は1年で大きくなるので、よりカーボンニュートラルと言っていいと思います。
さて、では炭を作るときにはどうでしょう。自分も竹炭を炭窯で実際に作るまでは誤解していましたが、実は炭窯で炭を作る際にはCO2はほとんど出ません。炭窯では、燃焼反応で竹などを焼くのではなく、最初だけ薪を焚いて温度をあげますが、あとは酸素を遮断し竹に含まれる揮発性分などの分解反応で温度が上がり、他の成分は揮発や分解されて炭素(C)と無機質のミネラルだけが残ったものが炭になります。従って、竹炭を含む炭は一般に空気中のCO2を炭に閉じ込める(固定する)効果があります。(できた炭を焼かない限り)そのため、炭はCO2削減の策の一つとして期待されています。
IPCCにおいても2019 年改良 IPCC ガイドラインにおいて、新たにバイオ炭に係る算定方法が提示され炭の炭素貯蔵効果が認められることになりました。
IPCCとは「気候変動に関する政府間パネル」のことで、国際的な専門家でつくる、地球温暖化についての科学的な研究の収集、整理のための政府間機構です。パリ協定で世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて1.5℃に抑える努力目標、といった文言をお聞きになったことがあると思いますが、その科学的根拠を提供しているのがIPCCです。またここでバイオ炭というのは、白炭、黒 炭、竹炭、粉炭、オガ炭など一定の燃焼温度等の条件を満たした炭のことをいいます。
これを受けて、日本ではバイオ炭に属する竹炭の炭素固定効果は炭の重量の43.6%と策定されています。竹炭1トンで436kgの炭素の固定効果があるということになります。この数字はちょっと保守的すぎるという意見もありますが、はじめに書いたように炭素は長期間固定しなければ意味がありません。そこでこのIPCCの算出方法では100年後までの固定量としています。(出典:環境省(2020)温室効果ガス排出量算定方法検討会 2019 年度(令和元年度)検討結果:森 林等の吸収源分科会( 2021 年 3 月 10 日閲覧 https://www.env.go.jp/earth/ondanka/ghg-mrv/committee/r01/material/LULUCF_01.pdf)
なお、ここでの議論でバイオ炭は農地に投入して使用することが想定されていますが、燃焼以外の竹炭の使用でも同様と考えられます。炭素(C)436kgはCO2に換算して 1.6トンになります。ちなみのCO2  1トンは・杉の木約71本が1年間に吸収するCO2量に相当・日本人1人あたりの年間CO2排出量の約半分に相当します。

日本政府においても2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略 においても炭による炭素固定を政策として進めていくことが示されています。
2050 年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略 令和3年6月 18 日  よりhttps://www.meti.go.jp/press/2021/06/20210618005/20210618005-3.pdfCO2吸収・固定<現状と課題>我が国の CO2吸収量のうち、93%(2019 年度実績)を占める森林は、吸収源として地球温暖化防止に貢献している。また、森林から生産される木材は、炭素を長期的に貯蔵することに加えて、製造時等のエネルギー消費が比較的少ない資材であるとともに、エネルギー利用により化石燃料を代替することから、CO2排出削減にも寄与する。…….また、近年、農地が果たす炭素貯留効果にも大きな期待が寄せられている。農作物等の CO2固定能力を高め、農作物残渣やバイオ炭等の形で積極的に地中に投入することにより、農地が果たす炭素貯留効果を高め、併せて土壌の肥沃度を回復させようとする取組が各地で始まっている。特に、バイオ炭については、2019 年改良版 IPCC ガイドラインに「バイオ炭施用による農地・草地土壌での炭素貯留効果の算定方法」が新規に追加され、2020 年の条約インベントリより農業用途の木炭等生産量を用いて報告を実施したことを受け、我が国で J-クレジット制度におけるバイオ炭の農地施用の方法論が策定されたところである。我が国の農地面積は 437 万 ha と広大であることから、バイオ炭の投入による炭素貯留等、炭素吸収源としての農地は極めて高いポテンシャルを持つと言える。今後は、研究開発、ブレークスルー技術の確立等を通じて、この能力を最大限引き出していくことが必要となる。

竹炭のCO2固定について触れてきましたが、竹林のバイオマス全体や竹炭についてもさらに調査が必要な部分もあります。
竹林の炭素吸収は、竹林が適切に管理されている場合にのみ可能で、放置された竹林ではCO2を放出する可能性もあります。(出典:  https://bambooroll.jp/blogs/study/inbar_report)https://bambooroll.jp/blogs/study/study_japan-bamboo )
竹および竹炭によるCO2削減効果は、現在の地球のおかれている状況からすれば微々たるものかもしれません。IPCCの報告書でもわかる通り、CO2の「削減」では気候変動を止められる段階ではなく、排出量以上に積極的にCO2を「吸収」しなければならないかもしれません。しかし、竹は竹炭によるCO2固定だけではなく、竹プラスチック、竹ペーパー、竹繊維によるプラスチックの代替、さらに鉄の5分の1の重さで5倍の強度をもつ竹CNF(セルロースナノファイバー)による建築材や自動車車体などへの応用などによる、間接的なCO2削減に大きく貢献する可能性を秘めています。(出典: 九州工業大学 竹のチカラ https://takechika.com/)